アラフィフ安らぎの庭     認知症のケアと心の成長♪

認知症両親をケアするコツ & 自分的how-to集

心に優しい風景 :  認知症の親の話を聞くために学んだこと

前回(80歳実母の認知症)の続き…。今回で一度この話は終了予定…

https://blog.hatena.ne.jp/usamimi33/usamimi33.hatenablog.com/edit?entry=6801883189077680686

■「弟には話すな」…と命じる実母…なんでそんな事言うの!?

UnsplashのSigmundが撮影した写真

 

認知症ケアのリアル体験:昼休み中に、母からの電話が…


「もしもし、うさみみ?」

職場での昼休み、ワイヤレスイヤホンとiPadでダンス動画を観ていたら、また母から電話が…。

 

「ちょっと、外に出るから待ってて…」

周りには、机で仮眠中の同僚もいるし、不審な話を突然はじめる実母との会話を周りに聞かれる訳にもいかない…。

 

中庭に面した渡り廊下に出たら、夏の空が広がり…。

…もう8月、母が父を連れて実家を出て2か月が経とうとしていました。

 

「…もう話しても、大丈夫?」

母にしては珍しく、私の状況への配慮が…認知症の調子がいい日なのだろうか…

 

「あのね、お父さんのことだけど、9月に特別養護老人ホームに入れそう。空きがでたと、ケアマネさんから連絡があったの」

 

W県の親戚宅に滞在中、近くの『有料老人のショートステイに、父はすぐ入所させられており、母だけが親戚宅に居候している状況だった。母一人でW県のショートステイの手配ができるはずはなく、おそらく誰かが手配した上で2人を呼び寄せたと、私は感じていた…

 

「そうなの!それは良かったじゃな~い」やや大げさに声を弾ませ、母の話の続きを待つ…母は私の声のトーンに敏感になっており、少しでも否定感があるとすぐに電話を切ると、この時既に学んでいました。


認知症ケアの秘訣2:『感情残像の法則』の重要性と学び


認知症の人は(中略)自分が話したり、聞いたり、行動したことはすぐに忘れてしまいます。

しかし、感情の世界はしっかりと残っていて、瞬間的に目に入った光が消えたあとでも残像として残るように、その人がその時いだいた感惰は相当時間続きます。

(中略)記憶などの知的能力の低下によって、―般常織が通用する理性の世界から出てしまって、感情が支配する世界に住んでいると考えたらよいでしょう。
 

~杉山孝博氏(川崎幸クリニック院長)の「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2228 より抜粋~(第5法則が「感情残像」)

 

今の母は「話を全て受け入れ、共感を表しながら傾聴してくれること」を強く望んでいるのだと、何度も心に浮かべながら…。

 

認知症になる前は、こちらの意見も聞いてくれたけれど、最近の電話ではいつも、私の機嫌を伺う気配がありました。

 

少しでも母を問いただすようなニュアンスがあると電話は切れてしまい、次の電話がくるまで日数がかかります。

 

「うさみみに言っておきたいの…今色んな事が進んでいるから『私がうさみみに話すことを、Kちゃん(うさみみ弟)には言わない』と約束して。理由はまた話す…とにかく約束ね」それだけ言って、母の電話はまた切れました。

 

私は茫然としたまま、中庭の木々と夏空を見上げました…。

木々の葉は優しく風に揺れ、蝉の声が中庭を満たし、足元の水辺には波紋が広がっていました。世界は変わらないのに、母だけなぜ…

 

なんで『弟に話すな』と…二人で話し合いながら不安な気持ちを分け合っているのに…兄弟を分断するようなことを、なぜ?…

 

一人でミステリーの世界にいる、人間不信気味の母の事がとても心配でした。母の電話があるたび、私も突然薄暗い世界に引き込まれるように感じていました。

 

誰かにこの気持ちを聞いてもらいたい…そんな時は前述のフリーダイアル

公益社団法人である「認知症の人と家族の会」(https://www.alzheimer.or.jp/

 

仕事が休みの朝に電波時計を電話の前におき、10時に数字が揃うと同時に初回電話コールが入るように…。

 

一度タイミングがずれると、回線が塞がり続け、午後3時の相談終了まで繋がらないこともありました。認知症の悩みは、それだけ数が多く、それだけ話を聞いてもらいたいのだ…。

 

もしかすると、認知症の家族と二人っきりで、同居している介護者の方…

もしかすると、認知症の当事者の、深刻な嘆きの電話…

もしかすると、眠れない夜を過ごして、10時の電話受付を待っていた人…

 

そんな人を差し置いて、この程度の不安で回線をひとつ使っていいのか…何度もそう思い、電話越しの相談者に聞いてみました。

 

「いいんですよ。認知症は重度の方が悩みがたくさんあると思ってます? 一概にそうとも言い切れないんです。

実はね、認知症が軽い段階だと自我もしっかりあるし、行動力も残っているでしょ? 普通の人と同じように動き回るけれど、考えることが少しずれてきている…。

その方が、ご家族にとって悩みが大きい時期だったという場合もあるんです」

 

認知症ケアの秘訣3:自分は『認知ケア初心者』と自覚しよう

その言葉を聞いて、霧が晴れるような思いになりました。

 

そうか…私はまだ「認知症ケア初心者」…認知症のことを良く知らず「家族を何とかしたい」と思う気持ちだけで、空回りしている…

 

初心者が辛い時は遠慮せず先輩に相談して、学びを得て中級者になればいい…。

割と当たり前のことが、認知症にいざ向き合うとできなくなる…。

 

そこで、ふと思う…「話を受け入れ、共感をもって傾聴してほしい」のは、果たして認知症患者にだけ起こる感情なのでしょうか… 

 

もし、全ての人が、同じような話の聞き方ができるとしたら… 

 

全ては無理でも、一度話を受け入れ、相手の余裕があると感じた後に、自分の意見を伝えるよう心掛けられたら… 

 

自分自身のコミュニケーションの在り方を、内省する機会となりました…

世界を変えられる一歩は、案外そんな所にあるのかもしれません。

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