母(80歳)の認知症についての話です。
「認知症がいつから始まった?」と聞かれることがありますが、言動がどうもおかしいなと感じたのは、今から2年前の6月頃でしょうか…。
■ある日突然の電話が…
「もしもし、うさみみなの?」ある平日の午後、当時はまだ仕事をしていた私の携帯宛に、母から一本の電話がありました。話を聞くと、どうやら別の県に住む母の親戚宅に、認知症の父と二人でしばらくお世話になる…と。
あまりに急なことで「どうして?お父さんと一緒に?」と質問しますが、「とにかく決めたから報告だけ!それじゃぁ!」と電話は切れてしまいました。
母と同じ市に住む弟に聞いてみたところ、「僕も止めたけど『もう決めた』しか言わないから…」と。私は、母の親戚宅にいるというんだから、呼ばれたんだろう。気になるけど、母は言い出したら聴かないところがあるから…と、そのままに。
その後も、母の突然の電話は続き、「実はお父さんだけじゃなく、私も軽度認知症(MCI)だと診断されたの」「高い値段だけど、今開発中の最先端の薬で治るかもしれなくて、そのための検査で他県に来たの…」
毎回すぐに電話は切れてしまうし、妙に焦った感じで脈絡のない話をする母の様子、なんだか急にミステリーの世界に迷い込んだような気持になり、弟と一緒に首をかしげるばかりでした。
軽度認知症(MCI)と診断されたショックかもしれないし、これ自体が認知症の症状のひとつかもしれない…。これは経験のある人に意見を聞いてみないことには、どう捉えていいのかの判断もつかない…とにかく、せっせと検索して相談先を探しました。
公益社団法人である「認知症の人と家族の会」(https://www.alzheimer.or.jp/)を選び、朝10時からの開始ちょうどのタイミングでコールしました。
今思えばこの出会いが大正解! 相談者はそのたびに変わりますが「認知症の家族を見てきた経験者」といった印象の落ち着いた女性が、自身の体験をもとにしたアドバイスをしてくれます。他の相談場所、県の窓口や公共機関に電話したこともありますが、私にとっては、このフリーダイヤルの窓口からの回答が、一番しっくりくる事が多かったです。
回答としては「(うさみみ母の場合は)認知症の初期なので、対応に悩みがちなケース…」とのことでした。それでも、いくつか覚えておいて欲しいことがあるとのこと…
■一番最初に学んだ、大切な事は「こだわりの法則」
「あるひとつのことに集中すると、そこから抜け出せない。
周囲が説明したり説得したり否定したりすればするほど、逆にこだわり続ける」というのがその内容です。
この会の副代表理事でもある、杉山孝博氏(川崎幸クリニック院長)の「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2228
の記事で詳しい内容は読むことができます。(第6法則が「こだわり」)
それでは母の「会話を拒むような強いこだわり」をどう扱うか…、結論は「家族として本当に困ること、本人の命に係わるようなこと以外は、まず様子をみては…?」ということで落ち着きました。私としても母の意思が固い以上、無理に説得しても、家族の関係が悪化するばかりのように思いました。
弟にもアドバイス内容を伝え「気になるけれど、今の段階では、まず母の意思を尊重する」という事で一致しました。家族の中で方向性を揃えておいて良かったと思います。もちろん、この後に方向性を修正する必要も増えていくのですが…
身近な人にほど、認知症の症状は強く出る といいます。身近な人=家族ですから、辛いですよね…。認知症の症状のある家族に対する思いが強ければ強いほど、面倒をみる立場になったご家族の、不安や焦りは大きくなると思います。
そんな中でも、不安を一人でため込まないことを、私は心がけました。専門家に相談してみたり、ネットで検索してみたり、公的機関に出向いてみたり…
動き始めてみれば、ほんの少しでも前に進んでいるような気がします。遠慮したり「こんな些細なことで、担当者の相談時間を使ってしまっては申し訳ない…」などと思い過ぎずに、悩んだ時には、ご近所の主治医を訪ねるような気持で、ぜひどこかに相談してもらいたいと思います。
相談すれば記録が残り、いよいよお手上げになりそうな事態が起きた時、前回の相談内容から先の話をすれば済みます。もしその後、相談する必要が無くなったとしたら、それまでの時間、心の支えになってくれたことに感謝するだけのこと…
「無理しすぎず、自分たちなりの範囲で対応していこう」弟と一緒に、最初に決めた方針が今でも私の支えになっています。
※本記事には広告が含まれます※